ヒギンズ先生

今日は、戯曲の中の発声法について見てみたいと思います。

ヒギンズ先生をご存知の方も多いと存じますが、映画「マイ・フェア・レディ」に出てくる天才言語学者で、実在のモデルがいて、発話からその人の出身地をあててしまう、耳のいい学者の役です。

もとは風刺のきいた作品で有名なバーナード・ショーの1913年の戯曲、『ピグマリオン』で、田舎育ちの花売り娘を、大使のガーデンパーティーで、公爵夫人として見紛われるような夫人に、ヒギンズ先生が仕立て上げる物語です。

この、しゃべり方をなおす発声法というのは、英語版ではありますが、あごをあけるところ、声を回すところ等、とても参考になると思われます。⇒のどが疲れない音読法

オードリー・ヘップバーンが一生懸命されてますねー。

町人貴族

また、もっと古い戯曲で、モリエールの「町人貴族」があります。

こちらは、1670年が初演で、天覧観劇というのでしょうか、ルイ14世がご覧になりました。

お金持ちの町人が貴族になるために、ダンスや音楽、剣術のほかに、「発声」を教わるシーンがあり、当時は哲学の先生が担当していたらしいです。

ちょっと引用させて頂きますね。(岩波文庫赤、鈴木力衛訳)

町人貴族Amazonから

哲学の先生:A(アー)の音は、口を大きく開くことによって作られる。A(アー)。

ジュールダン氏:A,A,なるほど。

哲学の先生:E(エー)の音は、下顎を上顎に近づけることによってつくられる、A、E.

ジュールダン氏:A,E,A,E.まったくだ。ほんとに、大したもんですなあ!

哲学の先生:I(イー)の音は、二つの顎をなおも近づけ、口の両端を耳の方に引っ張ることによってつくられる、A,E,I.

ジュールダン氏:A,E,I,I,I,I,I.ほんとうだ。学問万歳!

哲学の先生:Oの音はふたたび顎を開き、唇の両端、上と下とを近づけることによってつくられる。O(オー)。

ジュールダン氏:O,O。おっしゃる通りですな。A,E,I,O。I,O.こいつはすばらしい!I,O,I,O.

哲学の先生:口の開き具合は、Oという字にそっくりの、小さな円形になるのです。

ジュールダン氏:O,O,O.なるほど。O.まったく、ものを覚えるのは愉快ですな!

哲学の先生:U(ユー)の字は、歯を完全にはくっつかない程度に近づけ、唇もまた互いにふれ合わない程度に近づけることによってつくられます。U(ユー)。

ジュールダン氏:U,U.ほんとにその通りだ。

哲学の先生:二つの唇が、仏頂面をするときのように前へ延びるのです。ですから、仏頂面をして、誰かをからかってやろうと思ったら、その男に向かってUと云ってやればよいわけです。

ジュールダン氏:U,U.ほんとだ。まったく!なぜもっと早く勉強して、こういうことを覚えなかったんだろう!

哲学の先生:明日は他の文字、子音の勉強をいたしましょう。

ジュールダン氏:そっちのほうにも、こんな目先の変わったものがありますか?

哲学の先生:もちろんです。例えば子音のD(デー)、これは舌の尖端を上の歯の上のほうにあてると出るのです。DA(ダ)。

ジュールダン氏:DA,DA.なるほどそうだ!こいつは面白い!面白い!

哲学の先生:F(エフ)は、上の歯を下唇に押し当てて出す。FA(フア)。

ジュールダン氏:FA,FA.ほんとにそうだ。ああ!いまとなって、お父さん、お母さんがうらめしい!

哲学の先生:R(エル)は、舌の尖端を口蓋の上方につけて、勢いよく出てゆく空気がその間をかすめて通るようにする。すると舌の先は、口蓋を離れるが、一種の震動を起してまた同じ場所にもどってくる。Rra(ルラ)。

ジュールダン氏:R,r,r,r,r,ra。ほんとだ。まったくあなたは学がありますなあ!わしは、ずいぶん時間をむだにしたもんだ!R,r,r,ra。

軟口蓋をおろす

これは、フランス語からの訳ですが、全く参考になるし、Rの発音が軟口蓋を振動させるやりかたなので、引用させて頂きました。⇒(4)2階で声を出す

いまの日本語できこえるようにかくと、ガ、とか、ンガ、に近い、いわゆる、うがいの音です。

発声法では、フンガ、フンガと、できるだけゆっくりと、軟口蓋を下ろす練習をよくします。(前の記事(2)息をはらんで力抜くこと からの続きになります)

フンガ、フンガ、、といいながら、

ドレミファまで4つ上がって、

ソファミレと4つ下がって、

最後にゆっくりと、鼻のまわりの骨と肉と皮をはがすように、じわじわとやります。

軟口蓋が下がっているかどうかは、あまり実感できないかもしれませんが、そのときに、痰や膿が口に流れ込んでくるはずなので、一応それで、成功とみなします。⇒声で変わる健康増えている声の病気」のこと

気取っていると、もしかしたら、できないかもしれません。

ぜひご自分のペースでお試しください。

今、この方法を、誤嚥を防ぐ練習として、みなさまにお伝えしておりますが、難航いたしております。

もう少しお互いに精進が必要のようです。(私とお客様/患者さん)

その時、かわいいひ孫さんをお連れであると、ひ孫さんは、一発でマネをしてできてしまうので、何とも恐ろしいし、驚きです。⇒声(息)の場所と言葉の関係について

歴史ある発声法

最後に、西洋では、演劇の長い歴史と共に、発声法の歴史も長いことがわかっていただけたかと思います。

現代でも、声を商売にする、学校の先生、政治家、企業家、歌手、舞台俳優、等が、ふつうに発声法を学び、声をつくり、のどを痛めない話し方を身に付けているようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です