(5)声を出す場所のイメージ

鼻腔に吸い上げた息はこんこんと湧く湖の面をイメージする。

練習中の注意点

前回は、発声法で声を出すときに、口蓋の上と下で、母音と子音が動いていることをお伝えしました。⇒(1)声の出し方

それでもまだ、声の出る場所である、鼻腔・副鼻腔の位置がわからない方がおられるでしょう。

そんなときは、物理的にやってみても、うまくゆかないことがあります。

体調によって、気分によって、声が体から離れない時は、おそらくうまくゆきません。

ですので、一日のうちで、今ならできそうだというときに、少しずつ練習なさってください。

また、鼻腔の内圧を感じた時に、気持ちがよいのか、そうでないのかによって、声が違ってきます。

この場合ご自身が気持ちがよいことが肝心です。

実際に声を出す作業というのは、気合とか、離れわざ、によるところが大きいですので、無理をされないようにお願いします。

つまり、練習中の注意点として、体調の良い時に、数分単位で、続けて頂きたいです。

声を出す場所のイメージ

さて、今日のアイキャッチ画像は、あるしずかな湖です。これが、声を出す場所のイメージです。

吸った息を止めて息の上の方を軽くたたく

眉間やおでこの少し下あたりに、『なまこ』のような、コリコリした感じの所があると思います。そこがどうなっているか、ですが

声を出す場所のイメージ

上のような湖面のイメージを浮かべて頂きたいのです。

肺から呼気が、ふいごのように気管を通って、喉頭や咽頭を通過し、鼻腔・副鼻腔に到達しています。

今度はその息が、眉間当たりのレベルで、目の前に広がる湖となり、こんこんと泉がわいて水かさが減らないように、イメージしてください。

息の湖の水面に、『声』という平たい小石をビューンと投げるとき、上手な人は、5つか6つはずんで、最後にドボンと沈むでしょう。

あるいは、角度をつけて、上から投げてもいいですが、小石は沈まないで、湖面ではずむような、声を出す場所のイメージを思い描いて頂きたいのです。

この方法は、数ある説明のうち、いい声を出していただける、成功例のひとつです。

声を放り投げる

また、声はただ出しても相手に届きませんので、伝えるように、届けるように、声を出します。

顔の内部の、奥の方から、『声』を押して出してはいけないのですが、一方で『声』は、放り投げられなければなりません。

騒がしいところで、間に他の人が大勢いても、その人たちをはさんで向こう側の人にだけ、声を運ぶことができるはずですが、できるでしょうか。

それはやっぱり、声を上手にコントロールして、投げるやり方になります。→参考:声帯動画から見る、鼻腔の内圧の声

言葉で説明していると、面倒くさそうに思えますが、集中すれば、だれでもできるわざです。

声をぶつける

そのためのコントロールの練習として、たとえば、近いところの机の角に向かって声をぶつけてみる、とか、少し離れた、お部屋の天井の隅にむかって、『声』をぶつけてみるとか、暇な時間にためして、コツをつかんでおいていただけたらと思います。

きっとすぐに、できてしまわれるでしょう。

同じ「はっ」の一言ですが、おもしろいように、いろいろと、かわってくると思われます。

声を湖面から沈ませない

その間、声を息の湖面(声を出す場所のイメージ)から、決して沈ませないように、注意されてください。

一度でも、水面下に落ちたら、そこから先、浮上するのは大変な苦労になります。⇒FAQ

そのため、最後にひとつ、付け加えます。

舌は、声を出し終わるたびに、天井にはりつけます。

鼻腔の場所を突き止めるために、「はっ」と声を出していただいていますが、「は」というよりも、声を出し終わったときに、口を開けて頂くようにぜひお願いしたいのです。

それで、つまり、次の「はっ」をするために、いちいち舌を使って、湖面(声を出す場所のイメージ)の用意をしていただきたいのです。

そうすれば、湖面の水かさ、つまり、息の分量はいつまでも、満タンに保たれます。

加えて、舌を上にはりつけた時に、お腹が軽く引っ張られることも確認しておいてください。

もう一つ、できましたら、声が口蓋の上から漂うように、湖の上の波紋となってゆくのを、見届けてください。

声を出しながら息を満タンに補給する

『声』は波となって、まわりに漂わせてあげてください。⇒(6)息の通り道

下あごや舌に力が入ると、息を止めるのと同時に、口蓋の下で『声』がとめられたりします。

口をつぐんでしまうのもよくありません。口は開けておいた方が、鼻腔・副鼻腔に息が流れ込みます。⇒(2)息をはらんで力抜くこと

舌で天井(口蓋)をふさげば、息は自然に止まった状態になりますが、『声』は止めないで漂わせておいてください。

声を止めずに息を補給するのは、コツが要りますが、息を吸おうとするのでなく(吸えませんね)、力を抜いて、鼻腔や副鼻腔の場所を開けておくだけで、息(空気)は勝手に流れ込んできますので大丈夫です。

全然かんばる必要はございません。

すぐにできないかもしれませんが、時間はたっぷりありますので、焦らずゆっくりと、復習されてください。

次の声の準備をする

鼻腔・副鼻腔の位置がわかって、圧力がかけられるようになったら、声が息の湖面に沈まないように、弾ませて、次の声の準備に入らないといけません。

「こんにちは」というときに、「こん、に、ち、は」とすべて同じ息の分量でできていなければいけません。

「に」や「は」の息の分量のお団子が、小さな粒になってしまってはいけません。

一息でも言える言葉の長さですが、ここではあえて、4つの均等なお団子を作ってみてくださいますか?

おそらく、「こん」の粒が一番大きくなりますが、「に」も「ち」も「は」も、「こん」のように、開口一番の息の分量になるように、いってみてください。

もちろんですが、そのお団子は、湖面(声を出す場所のイメージ)の上にあるように、されてくださいね。

それぞれの言葉の間に、舌をはりつけて息をふさぎ、湖面(声を出す場所のイメージ)を作って、鼻腔・副鼻腔に上から息を流し込み、はずませながら、やってください。

子音の発音は、くれぐれも軽く短くおねがいします。

声を出し終わったら口を開ける

一度に多くを身に着けることは容易ではありませんが、最後に、声を出し終わったときに、声の波紋を見届け頂き、次の声の準備が不要であっても、口をあけたままで終了してください。

口を開けていると、のどの奥が開きやすく、鼻腔・副鼻腔に息を補給してから、終了することができます。

声を口蓋の上に残すことも楽にできます。

口はリラックスしたままあけておき、目や眉毛で表情をつくっていますから、気のないコミュニケーションにはなりません。

このように、声を出す事は、終わらないシステムであり、止まらないし、疲れない、元気なシステムといえるでしょう。

YouTubeでは、往時の名歌手が、目や眉毛で息継ぎをし、鼻腔・副鼻腔に息をたくわえながら、歌っているのが見られます。表情もとても豊かでわかりやすいですので、検索されてみてください。

又、よろしければ、のどが疲れない音読法変わる健康声の問題~よくある症例もご覧ください。

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※補聴器装用時の聞こえを研究している、Oticon社のブログから、参考として次の記事をお知らせします。文の終わりやことばの語尾が小声になる現象について書かれています。小声とは何か、または言語の違いがどのような影響を与えるのか