もくじ
きょうは、声を出す場所である鼻腔・副鼻腔の位置がわかったら、さらに、その空洞を安定させてキープ(保持)するようにしましょう。それが、鼻腔・副鼻腔に息をはらんで力抜くことになります。
前回までに、よくない声をだしていると病気の症状がある事(⇒声の問題~よくある症例、声で変わる健康)それから声には、正しい声を出す場所がある事などをお伝えし、その位置を確認しました。
⇒(1)声の出し方
発声法で「正しい声」を出すにあたって、その声を、もっと長く、強く、たっぷりと維持できるように、下あごをあけて、軟口蓋を降ろし、体の力をぬくことを少しずつ見てゆきます。
下顎(あご)を開けること
まず、下あごの開け方ですが、下あごが開きにくい人もいますし、まれに下あごが開きっぱなしの人もおられます。
昔は、自動洗濯機も無洗米も炊飯器もエアコンも自転車もなくて、たいそう不便な生活をしておりましたね。
しかし、そういう生活の不便な時代には、労働のために体をつかい、下あごをあける習慣がありました。
労働歌などもあり、いい声、健康的な声をされてる方が多かったでしょう。⇒口呼吸はこわい!
それでは、まず下あごを開ける前に、頭蓋骨の構造を見てみましょう。頭蓋骨は3つに分かれるとお考え下さい。
頭蓋骨は3つに分かれる

はじめに、『こめかみ』に、人差し指と中指を当ててください。
すっきりとスジが通っていらっしゃいますか?へこみのスジがなくても命にかかわるわけではございませんが、あいていた方がいいかもしれません。
こめかみに指を当てたまま、上図の青色の部分を1ミリでも2ミリでも、後頭部の方へスライドさせてみてください。
頭頂の皮を動かすだけでなく、眉毛を上げ、目玉も大きくされてみてください。
そのとき、両眼の下、眉間、鼻の付け根あたりが、広がって、顔面に風が入ってきたように、涼しさを感じられるでしょうか?
これが、鼻腔・副鼻腔に息が流れ込んだ状態です。つまり、鼻呼吸でいう「息継ぎ」というものになります。⇒(6)息の通り道
次に、『両耳の下』です。
下あごをあけるときに、少し前方に回すようにひらくと、いい感じです。
人によっては、反対咬合(噛み合わせ)になるかもしれませんが、息の道を確保するためには、そういうことが多々あり得ます。
下あごをあけたときに、人によっては、「スカッ」とか「ぐにゃっ」とか音がすると思います。
本来は、下あごを開けた状態でおられることが健康的で望ましいです。
今初めて開けたと思われる方も、過去に何度も開けておられるはずですので、これからは、意識して、下あごを開けた状態でいられるように、訓練されることをおすすめいたします。
ずっとあけたままで、観察してみてください。こうすると、のど(喉頭)の奥が広がり、鼻腔と口腔と喉頭がつながります。
背筋を伸ばす
さて次に、気づいて頂きたいのは、こめかみと下あごを開けて頂くと、背筋がのびることです。
背筋をのばしたら、両耳下の下あごの付け根に指をあてたまま、口を結んでみて下さい。
口の中、舌の状態
この時、くちびるだけをとじて、上歯と下歯は、閉じないでください。
そして、できれば、舌を口蓋(口の中の天井)にバキュームのように、張り付けてください。
つまり、上歯と舌が一組となって閉じている感じになっています。
舌の位置ですが、絶対ではありませんが、一般的に、舌の先端は上歯の裏につけ、舌根は下歯の裏に来る状態が望ましいです。
この舌の状態を発声法の基本とお考え下さい。
口はぽかんとあいたままで大丈夫です。⇒ FAQ
その形で、軽く鼻呼吸ができれば、鼻腔・副鼻腔に息をはらんでいる状態ということになります。
口をずっと開けたままでいられる
鼻腔・副鼻腔に息をはらんだ、この状態が一番楽であると感じるように、慣れていただければ、口呼吸の心配がなくなりますし、腹式呼吸も自然にできています。
声を出す場所である、「鼻腔・副鼻腔」以外のところから、発声はできないと思われます。
そして、鼻腔と口腔と咽頭がつながるので、のどが太くなった圧力で、膿や痰などの分泌物が口の中に集結し、すっきりとお掃除ができてしまいます。⇒のどが疲れない音読法
びっくりですよね!
これをすることが、今は、簡単でない方もおられるでしょう。
しかし、一日に3回、あしたは5回、明後日は10回とふやしていくうちに、きっと習慣にできますので、今は、心配ご無用です。
なぜなら、このように息をはらんでいる方が、慣れたら気持ちがいいからです。
これから先、1年後10年後30年後50年後を楽しみにしていただくため、楽な呼吸法をおすすめいたします。
軟口蓋をおろす
次に、軟口蓋についてお話します。
「(8)軟口蓋をおろす」でもっと詳しく説明しますが、今日のところは、頭蓋骨が3つにわかれて、舌先が上歯の付け根にあるとして、その状態で、うがいをすると考えたときに、軟口蓋が降りて、下のくちびるが緩み、下の歯茎をむいた、凄い顔になるでしょう。
これは、声を出しながらした方が分かりやすいので、のちほど説明させてください。余力のある方はコチラをどうぞ⇒(8)軟口蓋をおろす
一度にたくさん覚えるのは大変ですので、軟口蓋以外で、確実なところまで、進めておいて下さい。
がんばりましょう。
まとめ(声で変わる姿)
ふだん、下あごの開け方、舌の位置など、お考えになったことなど、ないのではないでしょうか。
ちょっと大変ですが、下あごを普通に開けられるようになると、今までいかに、鼻腔・副鼻腔に息が足りなくて、自分の体に力が入っていたかを、知ることになるでしょう。
下あごをあけ、息をはらんだ(息の分量を増やせた)暁には、肩こり、首こり、腰の痛みなどと、お別れできるかもしれません。
このように、下あごをあけたまま普通でいられることが、鼻腔・副鼻腔に「息をはらんで力抜く」ことの第一歩になるかと思われます。
下あごがあいて、息をはらんだ(息の分量がふえた)ことの目安は、肩の持ち上がり方でわかるでしょう。
両肩がすこし持ち上がり、わきの下が広くなって、肺が広がりやすくなると思われます。
わきの下の広がる目安は、テニスボールが入るくらいの広さの空間です。
立ち上がって確かめてみると、体の重心が上にくるので、腰への体重の負担が減っているのがわかると思うのですが、どうでしょうか。
つまり、胸が前に出てお尻が飛び出し、理想のS字形に近づいているでしょう。
さらに完璧を極めるのであれば、”ひかがみ”まで伸びることがわかるはずです。
膝の裏を”ひかがみ”と言いますが、「く」の字の膝を、逆「く」の字になるほどに、伸ばすことができるのです。
想像してください。ちょうど鶏が歩くような、片足立ちの動きになるでしょう。
鶏のようにやってみてください。
頭のてっぺんから、足のかかとまで、背筋を通って1本、バランスよく、ピンと伸びて、それは、気持ちがいいに違いありません。
なんだか体がうずずしてきませんか?
”ひかがみ”まで伸ばせたら最高です!
着物をきていたこと(鼻腔・副鼻腔に息をはらんでいた)
むかしの日本人は、着物を着ておりましたから、自然に袂(たもと)を気にして持ち上げ、腕をのばす所作の癖がありましたよね。
自然に下あごをあけ、息をはらんでいたのではと、かんたんに想像できます。
ぜひ一度、古い日本映画とか文楽の人形の動きをネットでご覧になってみてください。
人形は上腕をかくっかくっとさせて、お水を飲むのも大袈裟です(笑)。人形なのに、まるで息をはらんでいるように動くのがわかって、とてもおもしろく、また美しいですね。