発声法研究者としての私見
吃音の原因は、医学的にも完全には解明されていません(参考:Wikipedia吃音症)。そこで、発声法研究者の立場から、私なりの視点で原因を整理してみました。
私の仮説:吃音の根本原因は「口呼吸」にある
吃音の症状は、口呼吸によって引き起こされているのではないかと考えています。そして、その口呼吸を誘発しているのが、現代の日本語の発音習慣です。
つまり、吃音の本質的な原因は、声を「どこで出すか」という問題、すなわち、発声位置の誤りにあると考えています。
参考:声帯の動画から見る、鼻腔の内圧の声
声(息)の場所と言葉の関係について/鼻腔の内圧は負けない力
イタリアの吃音協会が示す視点との一致
イタリアの吃音協会(A.I.B.A.com ONLUS)の公式サイトによれば、吃音は遺伝的な要因もあるものの、早期の医療的・社会的介入により、未就学児の多くが改善可能であると記されています。この考え方は、私の仮説とも一致します。吃音は放置することで慢性化(連発性→難発性)しやすく、時間をかけず早期に適切な対応を行うことが重要です。
口呼吸が起きるメカニズム
人はリラックスしている時には鼻呼吸をしていますが、緊張、不安、体調不良(貧血・胃腸障害など)になると、口呼吸に陥りやすくなります。ある歯科のデータによれば、10〜20代の多くが口呼吸をしているとのこと。高齢者でも同様の傾向があります。
私は、日本語を話すときの発音習慣が、口呼吸を誘導していると考えています。
参考:口呼吸はこわい! 即!鼻呼吸に切り替える法
発声位置と吃音の関係
口で声を出そうとすると、鼻腔にあった息を喉や口に落とす必要があり、声帯やその周辺の筋肉に力が入りやすくなります。その結果、鼻呼吸が崩れ、呼吸のコントロールができなくなります。特に「音読」や「本読み」の際、意識が強く働くことで口呼吸に陥り、吃音が悪化するケースが多いように思われます。
なぜ「現代語」が問題なのか
日本語の50音は、母音と子音の組み合わせでできていますが、その表記方法が「Ka」ではなく「か」となっているため、母音と子音の区別が曖昧になっています。発音する際も、子音に注意が向き、母音が口の中(口蓋の下)で発音されてしまいます。
本来、母音は鼻腔や口蓋の上で響かせるべきもので、そこに声をのせることで、鼻呼吸を保つことができるのです。
鼻呼吸の維持が吃音改善につながる
鼻腔にきちんと息が通ると、息の圧力で上顎が自然に広がり、舌の動きやすさも増します。顎の発達途中の子供であっても、安定した鼻呼吸をしていれば、本読み時の呼吸の苦しさも和らぎます。
吃音の多くが本読みをきっかけに始まることを考えると、これは非常に重要な視点です。
参考:(2)息をはらんで力抜くこと (6)息の通り道 (9)息の持ち上げ方 (1)声の出し方 レッスン 気力回復~こりゃ神だわ?!
顎顔面の発達と発音の関係
顎顔面矯正に関するセミナーによると、現代の子供は鼻づまり、歯並び、姿勢などに問題を抱えやすく、5〜7歳の段階で口蓋を広げる装置を用いる例もあります。これは、舌が正しく動かせないことによる呼吸・発音の問題を解消するための措置です。
こうした問題が、現代語の発音学習と時期的に重なることは、偶然とは思えません。
生活環境の変化も背景にある
食生活や遊びのスタイルの変化、IT技術の進展など、現代の生活環境そのものが、身体の使い方や呼吸の仕方に大きな影響を与えている可能性があります。⇒ミッション (4)口蓋の上で声を出す 息を止め耳を澄まし記憶する法 (10)舌根を前に出す
結論:吃音の根本的な予防と改善のカギは「鼻呼吸」と「発声位置」にある
吃音の改善には、昔ながらの「鼻腔で響かせる」アナログ的な発声法を取り戻すことが重要だと考えています。
子音に引きずられず、母音を主とした発声を目指し、声帯に力を入れずに、鼻腔や副鼻腔で響かせる方法を再教育していくことが、吃音の根本的な改善に繋がるのではないでしょうか。