もくじ
嚥下障害と予防法
お年寄りや重症の慢性疾患の方に多い嚥下障害ですが、予防法がありそうです。方法をご紹介してみます。⇒口呼吸はこわい!
腹筋を復活させる
私がおすすめする方法は、正しい声を出して気道を確保し、まずバランスを保ったり寝床から立ち上がれるようになるような、腹筋を復活させる方法です。(1段階目)
(即!鼻呼吸にきりかえる法でもご紹介しましたが、何か安全なものを口にくわえるだけでも、息と腹筋が連動し、自分でからだのバランスをとることができたりします。)
内圧で気管を広げ太くする
下唇をゆるめることで、気管を広げ、呼吸のヒューヒューいう雑音をなくし、気管を太くします。鼻腔の内圧で咽頭喉頭を押し広げ、老化現象にあらがう、まけない生命力を維持していただきたいです。(2段階目)
それではまず、発声法で腹筋の利用を取り戻すことから始めます。⇒(1)声の出し方
鼻腔の内圧で声を出して立ち上がる 嚥下障害の予防法(1段階目)
患者さんによっては、こんなに苦しんでいる人に、声を出せなんて、残酷だ、やめてくれ!ということになるかと思われます。(病気の種類によります)
ですが、思い切ってためしてくだされば、いとも簡単であることがおわかりになるでしょう。(その方の体力にもよりますが、一瞬の検査でためすことができます)
それは、下あごやからだの力を抜くだけの事だからです。
人によっては、下あごを開けたり、からだの力を抜くことが、不自然でかえって痛みを感じる場合があります。その時は、痛みの両頬(ほお)の部分を、両手の平でやさしくマッサージしてあげてください。骨がきしんだり、筋肉がほぐれたりしているうちに、安定した鼻呼吸にかわってくるでしょう。
鼻腔・副鼻腔には簡単に息が流れ込む
目をあける、なにかを思い出してもらう、というだけでも、鼻腔や副鼻腔に息が流れ込んできたりします。⇒(7)声の回し方
大きな口を開けて笑ってみる
頭蓋骨を3つにわけて(⇒(2)息をはらんで力抜くこと)、舌を口の天井にはりつけ、奥歯までみえるように大きな口で笑ってみてください。声は出さなくても大丈夫ですから。
そうすると、こびりついた痰でなければ、簡単に痰は口の中にたれてくることがあります。
気を付けないと、その痰で誤嚥しますから、吐き出さずにいてください。
まるめたティッシュペーパーでぬぐうようにふき取っていただければ、口の分泌物の処理はかんたんです。吐き出すことによって、あごに力が入る方が、むしろ心配です。できたら、おそるおそる舌で、分泌物を送り出してください。ゆっくりと、悠然と。
舌を引っ込めない(誤嚥をしないうちに)
ちょっと乱暴なことを許してもらえるのでしたら、そのとき咳や誤嚥をしないうちに、こちらが舌をつかんで引っ張ります。ひっこむ舌をつかんで離さないようにしてください。⇒(10)舌根を前に出す
この先は、患者さんとの信頼関係も必要になりますよね。これは、発声法教室では、許される事になります。
病人のお声
病人のお声は、鼻腔の内圧で出していると考えられます。「水が欲しい」とか「苦しい」とか、おっしゃると思いますが、それはのど声ではありません。(失礼お許しくださいませ)(のど声というのは、声帯の筋肉の声で、空気の声ではありません。)
病気をされた時、弱っておられると、筋肉で声を出す力はなくなっておられるので、腹筋を使った、正しい鼻腔の声になっておられると思われます。
例えば、「こんにちは!」はダメかもしれません。ですが、たった2文字、ブタ、ウマ、シカ、ウシ、イカ、タコ、エビ、トラとか、正しい、鼻呼吸でやっているうちに、のどが開いて、目の周りが生き生きとしてくるのが、確認できると思います。⇒のどが疲れない音読法、
⇒息を止め耳を澄まし記憶する法
アイコンタクトをもって呼吸を整える
患者さんに書いたものを読んでいただくと、続けてノンストップで話されますから、書いたものをお渡しするのはよしましょう。あらかじめ「呼吸法」だと断っておいて、こちらの発音を真似するように、アイコンタクトをもって誘導してゆくと、大体だれでも、呼吸が整ってきます。
「鼻呼吸のしかた」については、繰り返しになりますので、即!鼻呼吸にきりかえる法をご覧ください。
たった2文字発音する分の息を吸う
注意点としては、上記の”ブタ~”から始める場合は、ブタを発音してから、息を継いでもらいますが、ウマを発音するだけのための、ほんの少しの息を吸うことです。
私も不思議に思いますが、こうすると、だいたい誰でも、鼻が通って、目が大きくなり、笑い出したり驚いたりします。⇒(6)息の通り道 声(息)の場所と言葉の関係について
病気を忘れていただく
人によっては、これだけで、元気になり、好き勝手なことをしゃべりはじめる人もおられます。病気を忘れてしまって。
ダメだった場合(声と腹筋が連動しなかった場合)
これを試して、だめだった人にまだお会いしておりませんが、臨床体験は少ないです。
もしもダメだった場合は、顔の皮と肉と骨をはがすように工夫して、いろんな方法をためしていただければ、いいと思います。⇒(8)軟口蓋をおろす
あきらめることは全然ありません。何かしら声(鼻腔の内圧)を腹筋に結びつける方法はみつかります。⇒
(9)息の持ち上げ方 (11)くちびるの力を抜く
呼吸の状態はみんな違っている
くしゃみができる人、あくびができる人、あごを開けられる人、舌を出したままにできる人、口を開けたままにできる人、それぞれ、人によって呼吸の状態はちがいます。⇒咳の場所を変えて痰を切る
⇒聴覚フィードバック~自分の声が聞こえないと話せない
ご本人が自覚されて、自分の発声器官の改善をされるまでには、たった数分の指導では追いつきません。
鼻腔の内圧は「気」があるということ
鼻呼吸をして、少しでも、(6)息の通り道が確保できるようであれば、それは、意識を取り戻す、正気に返る、五感がはたらく、手足が自由自在になる、ことの第1歩のことのように、私には思われるので、ご本人のご自覚を促すため、取り組ませていただいてます。
鼻腔の内圧で声が出せて、腹筋と連動することが確かめられたら、介助をたのんで立ち上がってみましょう。アレキサンダーメソッドをご存じですか?立ち上がる時に、頭を下げ、同時にお尻を上げておじぎをしてみます。鼻腔の内圧は「気」がある、意識があるということなので、そこで「えい」と声を出し、たちあがってみましょう。腰や腕や、からだのあらゆる関節に負荷がかからないことがポイントです。
このブログの運営をはじめて思うこと
このブログをはじめる前、発声法のことは、何も私がしゃしゃりでなくても、だれかがやってくださればいいことだと、思っていました。
けれども、口呼吸を直せば、きこえがよくなったり、下唇をゆるめれば、嚥下(のみこみ)が改善するのを、目の前にしていると、ますます黙っていることが良心に反する気がしてきました。⇒声で変わる健康 聞こえるのにわからない
人間が最期まで自立して生活する、肢体を自在に動かす、ためには、気をしっかり持って、鼻腔と副鼻腔に息をはらんでいることが、マストではないでしょうか。⇒ミッション
鼻腔の内圧でのどを開ける嚥下障害の予防法(2段階目)
鼻腔の内圧が、自分の腹筋に連動して、ほぼ自分の意志どおりに、自分の体をうごかしたり、意思表示ができるようになったりしたら、その次は、気管を広げて、下あごの力を抜き、もっともっと鼻腔の内圧や腹筋を感じていただき、嚥下障害を遠ざけます。⇒いじめに負けない鼻腔の内圧の力
嚥下障害の改善は即効
嚥下障害の改善は、ご本人が気づいて一生懸命に練習されるので、結構早いものです。
嚥下障害のある肺気腫の患者さんは、はじめ、自分が馬鹿に見られたくないと言って、口を開けるのを拒んでおられました。
しかし、鼻が通り、気分がよくなってくるのをつかみはじめると、自ら口を大きく開け、舌を鼻に付けるように外へ上へと出して、スッと短く息をすうことで、発作を凌ぐことを覚えられた様です。
さらにのどの開け具合を直感的に感じられた様で、人に見られないところで、舌根を上げる練習を何回もされているということでした。⇒(10)舌根を前に出す
ただし、くちびるがきれてしまったので、軟膏やはちみつを始終つけてもおられるようでした。
発声器官の改善(リハビリ)
腹筋を復活させたり、嚥下障害を克服されたりするのに加え、発声障害をなくしてゆくことも、安定的な症状の確保には必要となるでしょう。
嚥下障害と発声障害は同時に良くなる
「嚥下障害を予防する」一方で、「発声器官の改善(リハビリ)」をすることは、一石二鳥(喉頭をあけている状態は同じだと思われます)でもあります。⇒(3)誤嚥を防ぐしくみと発声法
軟口蓋もおろせるようになれば、もう不敵ですよね!
(軟口蓋が下りた状態とは口の中に食べ物を含んでいる状態のことです。)
鼻腔の内圧を自由自在に操り、正しい声を習得する道のりは、短い人もあれば、遠い人もあるようですが、改善の速度を気にして、ためらっている時間は惜しいと思われます。
重症の方のほうが、感覚が鋭くて、覚えは早そうです。多分死活問題でもありますので。
今回、声の出し方の詳細にふれることはできませんでしたが、具体的には、1)声の出し方 から7)声の回し方まで、ステップを踏んで当ブログで解説いたしましたので、よろしければ、ご覧いただければと存じます。
声で変わる健康
1)声の出し方
2)息をはらんで力抜く
3)誤嚥を防ぐしくみ
4)2階で声を出す
5)声を出す場所のイメージ
6)息の通り道
7)声の回し方
ともにがんばってゆきましょう。