南欧式長生き発声法では、発声時に軟口蓋(口蓋垂)を自分の意思で下ろす技術を重視しています。これは単なるテクニックではなく、声の響き・呼吸の質・健康に直結する重要な要素です。以下では、その理由と背景を詳しく説明します。
1. 発声面でのメリット
共鳴空間の拡大
軟口蓋を下げると鼻腔と咽頭がつながり、声が骨伝導も含めて豊かに響きます。南欧式発声法では、この響きの幅を自在にコントロールすることが、疲れない声・長時間の発声の鍵となります。
音色のコントロール
軟口蓋の上げ下げは音色の柔らかさ・明るさ・深みを調整します。クラシック歌唱、朗読、長時間の講演など、声の質を求められる場面で大きな効果があります。
2. 呼吸面でのメリット
鼻呼吸の促進
軟口蓋が下がることで鼻腔との通りが開き、自然に鼻呼吸へ移行しやすくなります。これにより、口呼吸による喉の乾燥や炎症のリスクが減少します。
腹式呼吸との連動
鼻呼吸は息の流速をゆるやかにし、横隔膜の動きを安定させます。結果として腹式呼吸が深まり、息量(換気量)が増えるため、発声の安定感が向上します。
3. 健康面でのメリット
誤嚥予防
軟口蓋の可動性が高いと、嚥下時に鼻腔への逆流を防ぐ反射が鍛えられます。発声練習を通じてこの機能を繰り返し使うことは、誤嚥性肺炎の予防にも有効です。
耳・鼻・喉・口の健康維持
軟口蓋を動かすことで耳管や副鼻腔の換気が促され、副鼻腔炎、ドライマウスの予防につながります。
自分で動かせるのか
さて、このようにメリットが多い「軟口蓋おろし」ですが、一般的には、自分で意識的に下げるのは難しいです。しかし、南欧式発声法では耳を鍛え、鼻腔内圧に集中することで、誰でもできるようになります。軟口蓋を動かす主な筋肉は口蓋帆挙筋、神経は舌咽神経と迷走神経で、脳幹の疑核から指令が送られてきます。
感覚をつかむ方法
軟口蓋は安静時に舌に触れていますが、普段その感覚は意識しません。鼻腔や副鼻腔の圧力変化を覚えることで、その位置や動きを認識できるようになります。さらに、唇・喉頭・肺の感覚と連動しており、下唇を緩めることも重要です。
例えば「パパ」と発音する時は呼気が鼻に抜けますが、「ママ」ではそうなりません。この違いを感覚として脳と体に記憶させることが、軟口蓋の自在なコントロールにつながります。
手術によるリスクと回復例
いびき治療のために口蓋垂の一部をレーザーで切除した方がいます。術後、いびきは一時的に軽減しましたが、中音域が出にくくなり、声が弱くこもるようになりました。これは共鳴空間の一部喪失と切り替え機能の低下が原因です。
当スクールで鼻腔・軟口蓋のコントロール訓練を続けた結果、2カ月後には響きのある声を取り戻せました。外科的処置は声や呼吸機能に深刻な影響を与える可能性があるため、まずは呼吸法や発声法による改善が安全で有効です。
まとめ
軟口蓋を下ろす技術は、
- 声の響きを豊かにし、音色を自在に操る
- 鼻呼吸と腹式呼吸を安定させる
- 誤嚥や耳、鼻、喉、口のトラブルを予防する
これらの効果を総合的に得られる、南欧式長生き発声法の核となる技術です。声や健康を守りたい方は、まずこの動きを身につけることから始めましょう。