睡眠中の口呼吸や上気道の乾燥は、喉の違和感や声のかすれだけでなく、睡眠の質の低下にもつながり得ます。鼻呼吸を保ち、首〜胸郭の過緊張をほどくことは、夜間の呼吸の安定に関わる土台です。ここでは、日中の呼気制御と姿勢調整から、夜の呼吸が乱れにくい条件を整える視点を提示します。
眠っているあいだは筋肉がゆるみ、のど(上気道)はもともと狭くなりやすい状態になります。
鼻がよく通っていると、吸う空気は温められ・湿り・きれいになり、副鼻腔でつくられる一酸化窒素(NO)も混ざります。
これにより口呼吸への切り替えが起きにくく、下顎の後退や舌根の落ち込みも起こりにくくなります。
反対に鼻づまりは口呼吸を招き、いびきや睡眠時無呼吸(OSA)の起こりやすさを高め、CPAPも続けにくくなります。
本章では、鼻呼吸を土台に、寝る姿勢・体重管理・鼻腔ケア・発声を使った上気道筋トレーニング・補助具や機器療法を、負担の少ない順に整理します。
- 眠ると“のど”はなぜ狭くなるのか
- 鼻が通るメリットとNOのはたらき
- 口呼吸が招く悪循環(いびき・無呼吸)
- 介入の順番:体位→生活→鼻→トレーニング→機器
【医療・リハ視点の補足】
睡眠の質は、呼吸(いびき・口呼吸・無呼吸)と強く結びつきます。睡眠で呼吸が乱れると、翌日の集中力・気分・痛みの感じ方・転倒リスクまで連鎖しやすくなります。
「鼻呼吸で静かに眠れた日ほど、声が出しやすい/食欲が整う」という体感は、現場のリハでも観察されやすいポイントです。
※強い日中眠気、起床時頭痛、呼吸停止の指摘がある場合は医療機関での検査をご検討ください。
🟢 睡眠と呼吸の科学
睡眠中は全身の筋緊張が低下し、上気道は虚脱しやすい環境になります。
鼻腔の通気性が保たれると、吸気の加温・加湿と副鼻腔由来NOの供給が維持され、口呼吸への移行が抑制されます。
その結果、下顎後退や舌根沈下が起こりにくく、咽頭閉塞圧(Pcrit)は不利に傾きにくい。
一方で鼻閉は口呼吸を誘発し、上気道形態と機能の双方からいびき・睡眠時無呼吸(OSA)のリスクを高め、CPAPの受容性も損ないます。
本章では、鼻呼吸を基盤に、体位管理・体重管理・上気道筋トレーニング(発声訓練を含む)・鼻腔ケア・補助具・機器療法を階層的に整理します。
- 睡眠時の上気道生理:筋緊張低下と Pcrit
- 鼻通気性の意義:鼻閉・口呼吸・下顎位・舌位の連関
- 介入の階層化:体位・減量・鼻腔ケア・発声/呼吸訓練・機器
- CPAPの受容性と鼻評価:導入前後の要点
