「舌はがし健康法」について

「舌はがし健康法」の表紙、石原ひとみ著晶文社版

最近「舌はがし健康法」石塚ひとみ著、晶文社㈱を読みました。
学ぶことが多く、とても参考になりました。
ただし、発声法では「息を吸うときの舌の利用」を追加すると思います。

「舌はがし健康法」の普及状態

巻末から、「舌はがし健康法」の施術が受けられる治療院が全国で18か所あることがわかりました。

まだまだ、舌の使い方が全国的に普及してないことがわかります。

わたしは「舌はがし健康法」が全国に広まることに賛成しています。

これから、「舌はがし健康法」について考えてみます。

発声法による舌の使い方に比べて問題点もありますが、最終的に舌が上がるのであれば、どちらでもいいと思っています。

「舌はがし健康法」になかった舌の利用法

「舌はがし健康法」にはなかった舌の利用法が発声法ではありますが、想像できますでしょうか。⇒声で変わる健康

著者は、舌の働きが、「食べる、しゃべる、だけじゃない」「姿勢の維持がある」と書いておられますが、それ以外にも、舌は「息を吸う」のにも使われるのです。

鼻呼吸するのに、舌を使います。

ちょっとやってみましょう!

舌を上げて息を吸う

普段鼻呼吸をされてる方は、鼻から息を吸っていると思います。
同時に舌を口の中の天井にぴったり張り付けて吸ってみてください。

吸った息の通り道を感じてみてください。
額(ひたい)、つまり前頭葉の裏側に向けて、吸い込めるのではないでしょうか。
息はすこぶる少量で済み、上咽頭をいためるようなことは、避けられると思われます。

私たち日本人にとって、舌を上げて息をすることはすこし難しいようです。(それは、奥歯で噛むように矯正されるから。)

しかし「人は1分間に12~20回呼吸しており、1日分に換算すると最大約2万9000回」(PanasonicのHPの「エアコン」から抜粋)呼吸するというので、

上述のように、一旦息を吸うたびに舌を上げたり、舌を上げたままキープすることを覚えたら、私たちが舌を上げて息をしたり、生活したりするのは苦でないと思われるのです。

「舌はがし健康法」でよかったところ

①舌は姿勢の維持に欠かせない「抗重力筋」

著者は、高齢者などの舌の下った人の姿勢の分析を次のようにしています。

頭部が不安定になり、5.6Kgもある重い頭を支えることができなくなると、首が前に傾斜し、バランスを取ろうとして歯をくいしばり、体の軸は後方にぶれ、腕や腹が前に出て、腰が引け、がに股・偏平足になります。

この詳述はその通りと思いますので、シェアさせてください!

舌の筋肉が、骨盤底筋群とつながっていることは、以前『ためしてガッテン!』で学びました。

この本では、舌の筋肉が、足の指先までの筋膜の連なりのスタートだと、教えてくれます。

発声法教室でも、半身不随の方に、発声法を教え、腹式呼吸で、声を出しながら、立ち上がる試みをしています。オンラインレッスンですが。⇒レッスン

舌を抜くようにして、口蓋(口の中の天井)にはりつけると、丹田に力が入り背筋も伸びます。まさに、舌の効用は、重力にあらがう、体や頭を持ち上げる筋肉であるとわかるでしょう。

そして、高い声をピアニッシモで歌うには、舌根を前に出して、大きな口をあけるでしょう。⇒舌根を前に出す

舌を楽に上げられるようになると、関節にかかる負荷がへり、体が軽く感じられ、体に無駄な力がかからなくなってきます。⇒(2)鼻腔・副鼻腔に息をはらんで力を抜くこと

あとは、機能的に理学療法的に、立ち上がる方法を採用します。

②舌で口蓋を押し上げていると認知症予防の可能性が上がる

これも本に書かれており、当発声法教室も採用しているものです。

”舌が口蓋を押し上げていると、その上にある脳が水平に保たれ、良い刺激をうける”(本文)ので、認知症にも良い影響があります。

発声法では、舌をあげて、舌根を前に出す口の開け方をしています。

舌の上がりやすい、この口の開け方が重要になるのです。

鼻の奥、口の奥が広がって、のどの内側の息道の太さが安定し、顔面の空気圧(鼻腔・副鼻腔)が高くなり、前頭葉に酸素を供給するのが、最大値になるというものです。⇒(6)息の通り道

発声法で脳を活性化

一般的に、歌手とかおしゃべりな人の頭(前頭葉)は、空気をはらんで大きくなっています。これは、認知症の症状と逆行する症状で、脳が活性化するものです。

認知症の症状では、脳の萎縮状態、脳の神経の喪失などがあるからです。

しかもその舌を上げるアクティビティは、心身に心地よい興奮を与え、いきいきと若返るような刺激のものです。たとえば、おいしい、うれしい、たのしい、気持ちいいなど。

現在、ある軽度の認知症の方が発声法を学んでいらっしゃいます。

ご家族の方が、本人の表情の変化や、口数の増え方にお喜びで、レッスンの継続が可能となっています。

ご本人の反応ですが、私の顔を見るとすぐに、口をあけてくださいます。

ただし、同じことばをずっと繰り返してしまうことがよくあります。

相手の話を聞くようにするため、舌をあげて息を止め、相槌をうつ、とか、質問に答える、とかの、やりとりをしたいのですが、時間をかけてしています。

これは、根気よく、愛をもって、練習する必要があると思っています。

発声法でできる医療的制度の提案

当然ですが、この活動は、私一人の力では及ばないことです。今後の課題として、発声法を理解してくださる方をふやし、医療の方面での制度化を希望する次第です。何卒よろしくお願いいたします。