※このページは、呼吸・発声トレーニングの視点から「睡眠中の呼吸」を理解しやすく整理した情報提供です。
医療上の診断・治療を目的としません。
睡眠時無呼吸症候群(OSA)などが疑われる場合は医療機関にご相談ください。
治療中(CPAP/PAP等)の方は、自己判断で中断せず、主治医の指示を最優先してください。 PMC+1
睡眠の質は、体調だけでなく、集中・記憶・気分・声の疲れやすさにも波及します。
ここでは「なぜ眠ると息が乱れやすいのか」「鼻呼吸が“土台”になりやすい理由」「生活習慣サポートとして何ができるか」をまとめます。
眠ると“のど”はなぜ狭くなるのか
睡眠に入ると、上気道(主に咽頭)を支える筋の働きが変化し、覚醒時より気道がつぶれやすくなることが知られています。
特に睡眠の開始や、REM睡眠では上気道の筋活動が低下・不安定化しやすく、いびきや呼吸イベントが起こりやすくなる、と説明されています。 ERSnet Publications+3ATS Journals+3Physiology Journals+3
大事な点は、これは「意志が弱い」などではなく、睡眠という生理状態の変化として起こり得る、ということです。だからこそ、対策は“根性論”ではなく、順番と安全性が要ります。
鼻が通るメリット(加温・加湿・ろ過)と、
NO(鼻・副鼻腔由来)の話
鼻は、吸気を温め、湿らせ、ろ過して下気道へ届ける役割を担います。乾燥した空気をそのまま口から吸い込むよりも、鼻の通路を使う方が上気道のコンディションに有利になり得ます。 PubMed+1
また、副鼻腔で産生される一酸化窒素(NO)が鼻腔内に存在すること、そしてNOが局所の生理に関わる可能性については研究が続いています。“鼻呼吸には鼻特有の生理がある”ことがわかります。 An
口呼吸が続くと何が起きやすいか(乾燥・力み・悪循環)
睡眠中に口が開きやすい人は、喉や口腔内が乾きやすく、起床時の不快感(乾燥感、粘つき、声の出しにくさ)につながることがあります。
ここは個人差が大きい一方で、「鼻の加湿・加温」という構造上の役割から考えても、口呼吸優位が続くことは好条件になりにくい、という整理はできます。 PubMed+1
ただし、口呼吸は「癖」だけでなく、鼻閉(アレルギー性鼻炎など)や顎位・舌位、寝姿勢、ストレスなど複数要因で起こります。一つの原因に決めつけず、できるところから整えるのが現実的です。
介入の順番:体位→生活→鼻→トレーニング→機器
介入の順番(安全性が高い順)
① 体位(寝る向き)・睡眠習慣
横向きで楽になる人もいます。枕・寝具・寝室環境(乾燥、室温)を含め、まずは負担の少ない調整から。
② 生活要因(体重、飲酒、鎮静、疲労)
飲酒や強い疲労は睡眠の呼吸を不安定にしやすいので、できる範囲で見直します。
③ 鼻(通気・アレルギー・乾燥)
鼻が通らないと、どんなトレーニングも長続きしません。鼻のケアや受診を含め、鼻の通り道を確保します。
④ トレーニング(呼吸・舌位・力みの再学習)
ここで大切なのは「息を一定にしよう」と頑張らせることより、結果として息が整う“手がかり”を持つことです。
⑤ 機器(医療の領域:CPAP/PAP等)
中等度〜重度のOSAなどでは、PAP(CPAPを含む)が推奨される治療の一つとしてガイドラインで整理されています。該当する方は、自己判断で外すのではなく、必ず主治医と相談してください。 PMC+1
呼吸トレーニングとしての「鼻呼吸リップピース」の位置づけ)
鼻呼吸リップピース(開発・検証中)は、「唇を閉じる器具」ではありません。口唇をカバーして口から吸い込みにくい状況を作り、鼻呼吸へ戻る“きっかけ”を作る生活習慣サポート(トレーニング補助)という位置づけです。
- 期待しうる方向性:口からの吸い込みが減る → 舌位・顎位が落ち着く → 喉や首の“余計な力み”が減る方向へ向かうことがある(個人差)
- ただし:医療上の治療効果(OSAの改善・予防等)は未確定です。必要なら医療評価と併走してください。
使い方と注意点(必ずこちらへ)
取扱説明書・慣らし方・注意事項・お手入れは固定ページにまとめています:
▶ https://spiratanto.com/support/
※違和感・痛み・息苦しさが出た場合は中止してください。睡眠時無呼吸の治療中(CPAP/PAP等)の方は、必ず主治医の指示を優先してください。 PMC+1
日中の練習(短時間から)
「息を一定にして」は、多くの人にとって実行が難しく、かえって緊張を増やします。代わりに、“声が当たる骨の場所(響きの当たり所)”を探すことを手がかりにします。結果として呼気が安定しやすくなります。
おすすめの入り口(数分でOK)
- 鼻で吸って、軽く声(小声〜中声)
- “喉を開ける”ではなく、“骨に当てる”
- 苦しさ・詰まりが出たら中断して休む
(具体的な手順はサポートページへ)
▶ https://spiratanto.com/support/
受診の目安(セルフケアの前提)
次に当てはまる場合は、セルフケアだけでなく、医療評価を優先してください。
- 大きないびき、呼吸が止まると言われる
- 日中の強い眠気、運転中の眠気
- 起床時の頭痛、血圧が高い、夜間頻尿が増えた など
OSAの検査や治療は医療の領域です。PAP(CPAPを含む)療法は成人OSAの治療としてガイドラインで整理されています。 PMC+2CME Outfitters Medical Education+2
症例メモ(匿名・個人差あり)
※以下は個人の経過メモで、効果を保証するものではありません。
重度の無呼吸でCPAPを使用している方が、呼吸・発声の再学習を半年ほど継続し、CPAP使用下の残存AHIが大きく低下しました。一方で、日中のトレーニング課題では「言えばできるが、普段は戻ってしまう」という癖が残り、“機器で守られている間に、呼吸と喉の使い方をどう再学習するか”が鍵だと感じています。
※CPAPの継続・調整は主治医の指示を優先してください。 PMC+1
参考:このページの根拠としている文献(最小限)
- 睡眠で上気道筋活動が低下し、虚脱が起きやすくなる(総説・生理学): ERSnet Publications+3ATS Journals+3Physiology Journals+3
- 鼻の加温・加湿機能(鼻の主要機能): PubMed+1
- 副鼻腔由来のNOに関するレビュー: Anatomy Journals+1
- 成人OSAに対するPAP(CPAP等)治療ガイドライン: PMC+1
- 成人OSAの診断ガイドライン: CME Outfitters Medical Education
鼻呼吸リップピースは現在、試作・検証・資料整備中です。販売開始は2026年2月予定(状況により変更の可能性あり)。最新情報・取扱説明書はこちら:
▶ https://spiratanto.com/support/
▶ お問い合わせ:koenokea.yokouchida14@gmail.com
【医療・リハ視点の補足】
睡眠の質は、呼吸(いびき・口呼吸・無呼吸)と強く結びつきます。睡眠で呼吸が乱れると、翌日の集中力・気分・痛みの感じ方・転倒リスクまで連鎖しやすくなります。
「鼻呼吸で静かに眠れた日ほど、声が出しやすい/食欲が整う」という体感は、現場のリハでも観察されやすいポイントです。
※強い日中眠気、起床時頭痛、呼吸停止の指摘がある場合は医療機関での検査をご検討ください。
【まとめ・注記】
睡眠の質は、呼吸の質とつながり、翌日の声・集中・回復感に影響し得ます。
全体像(鼻呼吸・微呼気・呼吸柱)は「声で変わる健康」にまとめています。
※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的としたものではありません。症状が強い場合や基礎疾患がある場合は、医師・言語聴覚士(ST)・理学療法士(PT)などの専門職にご相談ください。

