1. デジタルが悪いのではなく「処理」が音を変えている
デジタル音声はなま声の、アナログ音声に比べて聞き取りにくいです。
デジタル変換は、聞こえやすさの要素「倍音」を消しているのでしょうか。
変わりやすいのは、TV・配信・通話で入る
- 帯域制限(電話のように高域が落ちる)
- 音声圧縮(codec)
- ノイズ抑制(noise reduction)
- ダイナミクス圧縮(音量を平均化)
といった“処理”です。音声コーデックがパラメータ測定やプロソディ(抑揚)に歪みを生む、という報告も出ています。 Frontiers+1
また、狭帯域(例:〜3.4kHz)より広帯域のほうが「自然さ・品質」が上がるのは、技術文脈でも基本整理として共有されています。 MECS Press+1
2. 研究として確かなのは「劣化音声=聴取負荷が上がる」
“倍音が少ないと感受性が落ちる”を、研究用語に翻訳すると
degraded speech(劣化音声)→ effortful listening(努力聴取)です。
劣化音声は、理解のためにより多くの注意・予測処理を要求し、脳活動や指標(瞳孔など)として聴取負荷が上がる、というレビューが蓄積しています。 PMC+2サイエンスダイレクト+2
補聴器の雑音抑制の研究でも、「明瞭度」だけでなく「聴取負荷」や「音質評価」を分けて測る流れがあります。 PubMed+2Orbit+2
3. 劣化音声を聴くと「顎が閉まる」のか?
劣化音声を聞いて、“顎が閉まる”と特定した直接研究は多くありません。
ただし、聞いているだけでも発話運動系(motor/premotor)が関与する、というレビューはあり、知覚が身体と切れていないことは支持されます。 PMC+1
劣化音声は聴取負荷を上げ、知覚は運動系とも連携する。したがって、聴く側の身体(顎・喉周辺)が“固まりやすい”可能性は仮説として検証できる。
4. 10秒でできる「聴く身体」チェック
同じ人の声を
- 生声(対面)
- 通話(狭帯域)
- TV/配信(圧縮・抑制あり)
で聞き比べて、聴く側の
- 奥歯の接触
- 舌の位置
- 息の深さ
- テンポ(常在拍)
がどう変わるかを記録します。「聴くリハ」を“検証可能な観察”にします。
ここまでのまとめ(シリーズの芯)
- 顎が締まると、母音空間が縮み、輪郭が薄くなりやすい。 I-LABS+1
- 声の劣化(帯域・圧縮・抑制)は、自然さを損ねたり、聴取負荷を上げやすい。 MECS Press+2Frontiers+2
- 「聴く身体」は現象学で終わらず、努力聴取・知覚—運動連携の言葉で説明できる。 サイエンスダイレクト+1

